弊社(中堅IT企業)では、夏と冬の終わりに大学3年生を招きインターン研修をしています。先日冬の部のインターン研修が実施され(合計2回)、そこで2時間の持ち時間をもらいマーケティングやUXの話、そしてその流れで『アイデアスケッチ』に関しての演習を行いました。
反省点だらけなので、自戒の念を込めて備忘録に残したいと思います。
Contents
目的を認識する~なぜインターンを実施するのか?
企業が実施する『インターン』の内容は様々ですが、目的の多くは良い新卒者の早期確保です。中長期、OJT(On-The-Job Training 実業務を先輩の指導を受けながら行う)で実際に働くことがメインの場合もありますし、数日間のワークショップを行うところもあります。
大企業であれば応募者も殺到しインターンですら選考がありますが、弊社のような中堅企業はまず『学生に知ってもらう』そして後々『選んでもらう』必要があります。
研修を組み立てるに当たり、その「弊社のインターンの目的」から外れないことを一番意識しました。
KPIは「終了後アンケートで全員に『UXに興味が出た』もしくは『今日学んだことを活かしたい』と書いてもらうこと」です。「全員」は重そうに聞こえて、実はインターン後に返ってくるオンラインアンケートも回答率は100%ではないうえ、多少「良く思われたい」が学生さんの意識にあるので…逆に軽いかもしれません。
前回(夏)のインターンの振り返りと反省を活かす
マーケティングやUXに絡んだ研修を担当するのは昨年の夏に続いて2回目です。
前回のタイトルは「マーケティングの基礎とUXの入り口」でした。以下のような流れを想定しており、前半の基礎講座は時間通り進んだものの、ペルソナを作るのにかなり時間を費やしカスタマージャーニーマップを作るには至りませんでした(時間が足りないことがわかったので、途中でペルソナのパターンを増やして時間を埋めるという荒業発動(-_-;)。
- スライドを使ってマーケティングの基礎説明(15分)
- 身の回りのUX例(20分)
- 誰が使うのか – ペルソナを作ってみよう(30分)
- どうやって使うのか – カスタマージャーニーマップを作ってみよう(45分)
- 総括(10分)
大きな敗因は「自分が思っていたよりも大学生には難しかった」、つまり「自分が考えていたよりも、大学生にわかりやすく説明するのは難しかった。上手く誘導できなかった」でした。
思い起こせば大学4年生で経験した教育実習そのもので、どこまでターゲット(教わる人)に合わせて、わかりやすいプログラムを用意するか/進行するかが最適化できませんでした。
教育実習では、中学1年生の美術を受け持ちパブロ・ピカソの『ゲルニカ』について授業をしました。じっくり考えて実習要項を作成したつもりだったのですが、担当教官に「これでは中学1年生には理解できない。もっと低レベルで!小学生だと思ってやらないと。」とすべてやり直しに。
絵画鑑賞なんて親の影響でもなければしないと思われますし、興味がない子も多いだろうと「そもそも論」に戻り、『絵を鑑賞することの楽しさ』から教えるべきだと考えました。
描かれた時代背景や画家の心理・環境などを知ることで更にその絵に興味が出た、自分自身の経験を鑑みて教科書には載っていない時代背景やピカソのことを話したり、実際に自分が『ゲルニカ』を観ることになったきっかけや、その時みたスペインの様子などを写真を入れて話すことから始めました。
『ゲルニカ』の迫力を知ってもらうために、A2サイズの紙に自分で絵の一部を実寸大で描き実際の位置に近いところに貼りけてみたり、身体を使って(動いて)「ここから、ここまでの大きさ」と大きさを表現して飽きさせない工夫もしました。
まずは「興味を持たせる」「楽しませる」こと、そして受ける人(ターゲット)に合わせることが何より重要だと学んだはずなのに…。
ゼロから考えるのが難しかったので、参考にさせてもらったもの
とにかく楽しく!飽きずに、そして2時間で終わるもの!ということで、今まで耳にしたことのあるUXやマーケティングに関わるワークショップの中からいくつか候補を上げてみました。
最初にやろうとしたのは、某UXのイベントで聞いた『ペヤング』を使ったユーザー観察のワークショップ(どこか大学の授業)だったのですが、始まる時間が15時ということもあり、お腹も空いていないしどうかなと。
次に考えたのが、少し前に”積読”(つんどく=読まずに積まれている書籍)に仲間入りしていた「アイデアスケッチ ―アイデアを〈醸成〉するためのワークショップ実践ガイド」に掲載されている、、高校生向けに実施された実際のワークショップのアイデアでした。
ワークショップの時間が2時間だったことと、「高校生向け」に実施されたワークショップの事例ということでちょうど良いなと。そこで以下のようにタイムテーブルを考えました。
- 自己紹介とアイスブレイク(5分)
- スライドを使ってマーケティングの基礎説明(15分)
- 身の回り・秀逸なUX例(15分)
- アイデアスケッチの練習-立体を描く(15分)
- アイデアスケッチの練習-クイズ(15分)
- アイデアスケッチ実習(50分)
- 総括(5分)
少し書籍に載っている例より実習に回せる時間が少ないけれど、なんとかなるかな…と。
時代は繰り返す…時間配分が大失敗
結論を先に言うと、見ていた人事総務部長(参加もしていた)に「面白かった!」と高評価をもらい、アンケートでも「面白かった」「普段意識していない物作りの基礎を考えることができて参考になった」など返ってきたアンケートではKPI達成と言える状況でした。
ただ、大問題なのが「アイデアスケッチ実習」まで行かなかったこと。
「アイデアスケッチの練習-立体を描く」は15分で終わらず20分かかりました。球と立方体をサインペンとCOPIC(コピックペン)で紙に書いてもらうのですが、どの参加者もすごく真面目に取り組んでくれるので「ここで終わり」となかなか言えなかったのです。
そして、「アイデアスケッチの練習-クイズ」に至っては30分以上かかってしまったのです。
その原因は前述の「ここで終わりと言えない」もありますが、なかなか答えが出てこず…ヒントを出すのですが、そのヒントが良いのかどうか迷うところでした。もしかしたらヒントを出しすぎたかもしれないのですが、結局、参加者を上手く導くことが出来ず正解は一つも出てきませんでした。
結果、最後の「アイデアスケッチ実習」をするほど時間がなく、とはいえ時間は埋めないといけないので急遽「色々なものを書いてみよう!」と落書きタイムを追加したのでした(デジャブ)。
反省と2回目での改善
「アイデアスケッチの練習-クイズ」は自分が解けたこともあり、絵を描きながら考えれば半数ぐらいは答えが出せるだろうと軽く考えてしまっていました。
よくよく考えれば、自分が正解を導き出せたのは訓練した結果ではなかったかと。絵画を学んでいたときにデッサンをしていて注意された中に「立体に見えない」というものがありました。「立体には裏も横も上下にも何かある。表面だけ見ないで、見ている側から後ろまでどのようにつながっているかを意識して、立体全体を理解して描きなさい。」というものです。これが意外と役立ったのかもしれません。
1週間後の2回目では、このように変更しました。
- お互いの自己紹介(10分)
- スライドを使ってマーケティングとUX・人間中心設計の基礎説明(30分)
- 身の回り・秀逸なUX例(20分)
- アイデアスケッチの練習-らくがきをしてみよう(15分)
- アイデアスケッチの練習-画伯になってみよう~リラックマ、ちぃたん、せんとくん(15分)
- アイデアスケッチの練習-立体を描く(15分)
- アイデアスケッチの練習-クイズ(15分)
- 総括(5分)
絵を描くことに関して苦手意識を持っている人は多いので、紙とペンでメモを取る事、図やイラストで人に説明すること、頭の中をみんなで共有することの大切さを練習前に差し込み、楽しくスケッチするための最初の一歩と位置付けました。なのでばっさりと「アイデアスケッチ演習」は削除?
前回、シャープペンシルと消しゴムを使わせてしまったので、『らくがきの掟』としてなぜペンを使うのか・大きく描くのかも説明しました。
2回目はクイズの答えを参加者の30%が出すことができました。ただ、ヒントが適当だったかは自分ではわかりません。
次回、気をつけること
多少の改善もしつつ2回実施しましたが、まだまだ反省点は多く、目的を達しているのかは自信が無いところです。根本的なこと(自分のファシリテーターとしての技量など)も含め、色々と思いついた改善をメモします。
- 作業時間は長めに取る。時間が余ったら出来ることを用意しておく
- 何のためにペンを用意したかを説明する(持参のシャープペンと消しゴムで下絵を描いている人がいた)
- 一人一人を周って、改善ポイントをもっとわかりやすく説明する。自分で改善できるようにする(考えさせる時間が長かった)
- マーケティングの話を細かくしすぎてもわからないが、あまりに足早では意味が無くなってしまう。少しゆっくり目に質問しながら進める(飽きないように)
- ビジネス用語説明はちょいちょい挟む(情報系が多かったせいか、ビジネス用語はほぼ知らなかった)
- やはり演習まで行くように組み立てるべき=考える・工夫する
結局、去年の反省が活かせていない…というのが最大の反省です。
苦肉の策のらくがきタイムも改善
時間を埋めるために「今できることは」と投入した「らくがきタイム」ですが、図やイラストでメモを取ることは、思考を整理するためにも、自分の考えを正しく相手に伝えることにも有効だと日頃から考えています。
もしかしたら、そういうことをビジネス向けに何かまとめた書籍があるのでは?と調べたところ、以下のタイトルがありました。次の機会はこちらも参考にさせて頂いて、もう少し効率邸にパワーアップしたいと思います。
あと5回ぐらいやれば、少しは迷わず出来るようになるかもしれないな…と思ったら、次は新入社員に対して「マーケティング基礎」と「企画資料の作り方」をレクチャーすることになりました。
企画書の作り方から、ノベルティグッズの企画に落としていく流れは決まっているので、欠けたり何かに差し替えたりは許されません。さらにハードルが高くなりました…。