Sansan株式会社(さんさん かぶしきがいしゃ)が提供する、名刺管理アプリ Eight(エイト)。「便利!」と気に入って愛用している一方、最近は戸惑いも感じ、利用を止めようかと思うほど。
その理由はただただ、「私のUXが悪くなった」から。
「名刺アプリ Eight(エイト)」ってどんなアプリ?
Sansan株式会社は2007年に創立し、人が手で名刺データを入力するため正確なデータが登録されることがウリの名刺管理サービスを提供している。法人向け名刺管理サービス「Sansan」はテレビCMでもお馴染みだ。個人向け名刺アプリ「Eight」は100万人が使っている(Eightサービスサイト記載)そうだ。
古い昔は大量にたまっていく名刺を名刺専用のクリアフォルダに整理していたが、スマートフォンが登場し、移動中にも仕事をすることが当たり前になると、名刺をカメラで撮影しデータ化できるスマホアプリを導入した。このアプリは、光学文字認識(Optical character recognition/OCR)技術で名刺に記載されている情報をテキストデータに変換・登録・整理するものだったが、まだまだ文字の認識の程度が正確ではなく、登録の都度、氏名や住所などの情報を手で修正入力をする必要があった。
Eightはその問題を「人が手で入力する」ことで解決。利用開始直後は登録に数日かかることを不便と感じたが、慣れてくると「Eightに登録されるまでは名刺を持ち歩けば良い」と自分なりの解決策でその問題点はなくなった。
一番便利だと感じたのは、登録した誰か(自分も含む)の名刺が部署移動などで変わったときに、最新情報に自動で更新されることだった。お客さまがどの部署に異動されたか、昇進されたなどの情報はコミュニケーションの上でとても役立つ。
逆に気になったのは、名刺交換をしていない人とコミュニケーションできる機能があったり、知らない人の名前がフィードに出てきたり、自分の情報を更新したときに知らないうちに共有されたりといったこと。お客さまの情報を知らないうちに公に拡散してしまっていないかと不安になった。
機能の追加で、Eightの使い勝手がどんどん悪く…
人によりアプリの使い方は異なるし、またそれを制限することはできないもの(例えば、梱包用のガムテープで服の汚れを取るなど)で、私個人はEightを名刺管理にのみ、そしてスマホでのみ使っている。ニュースはRSSやニュースアプリを使っているし、密にコミュニケーションを取る人には使い慣れた専用アプリを伝えてあるのでこれ以上のツールは必要ない。
名刺管理だけやってくれればいいと考えているEightから不要な通知が来たり、名刺管理のツールなのにメインがニュースなどを含むフィード(ボタンが一番左にある)なのは違和感を覚える。読まなければいいだけではあるが、必要な情報に行くためにタップ数が増えるのはUI上のご法度と言えよう。
LINEのタイムラインも機能追加の失敗例だと思うが、運営側の都合や思い込みであまり使われない機能を増やし、ボタンや選択肢を増やすことはユーザーに戸惑いを与えたり、使い勝手を悪くしている典型的な例だろう。今や私のLINEのタイムラインは美容系の広告動画に占拠され、ほとんどタップすることもなくなった。友人の中にはタイムラインに情報をアップしている人もいたが、これを理由に最近はまったく見ていない。
ひとつのバグが命とりになることもある
このように不満を持ちはじめていたところに、先日の「キャリアサマリ」登録機能の実装があった。この機能自体は「登録しない」を選択したり、それが二度と通知されなければ特に問題の無いアップデートのはずだった。
しかし大きなバグ;
- ウォークスルー(新しい機能の説明3ページ)を見た後にキャリアサマリを登録せずに閉じると、次の利用時にまたウォークスルーからはじまる
- それならばと入力したら、共有しろと言われ、断ったら入力内容は保存されずまたウォークスルーから
- 今度はバグ報告的な内容を登録し共有したが、また次回ウォークスルーから
- またキャリアサマリにコメントを入れて共有してみたが、どうやらそのコメント(前のコメントも含め)は登録されていない
のために、私の感情は一遍した。
職業柄色々なパターンを試してしまうが、使い勝手が悪くなったことに加え、このようにすぐにテストで発見できそうなバグがあるままでリリースされたことでガッカリ感が半端ではない。
※このバグは現時点(2017/03/09)でも修正されていない
機能追加は何のため?
Eightは人によってはプロモーションツールかもしれない。でも、そう思っていない人にとっては、フィードはバナー広告より迷惑だろう。運営側からすれば商品であるし、マネタイズしないと開発も進まない。が、使い方を強制したり、使用に面倒が出てくれば、ユーザーは別のツールを検討するかもしれない。
100万人に使われているツール故にどのようなユーザーをターゲットにするかで仕様が変わるのは当然だが、ユーザー増を目的に機能を増やしているのであれば、本当にそれでユーザーが増えているのか。プロモーションや営業ツールとしての機能なのであれば、名刺アプリとしての使い勝手や心地よさを害している点はないかを見直す必要がある。