最近話題(?)の2つのいわゆる「エロPR」。
ひとつは、サントリーさんのビール「頂」(いただき)のCM。
そしてもう一つは、宮城県の壇蜜さんを起用した県のPR動画。
この二つの動画に対し、一番最初に思ったのは「下品だなぁ」ということ。即刻、「これはけしからん!放送中止だ!」とは思わず、「バカなことしているな」と。
それでもサントリーにちょっとがっかり。企業イメージに変化を与えたコマーシャル
でも、世の中の何パーセントかの人はもちろん黙っていられず、サントリー「頂」のCMはかなり早い段階で放送が中止され、代わりのCMが(私の記憶では)3日後には放送されていました。
大変だったろうなぁ…。
徹夜したんだろうなぁ…。
と、現場を想像しながらちょっと悲しい気分で、唐沢寿明さんの明るい顔を眺めていました。(労をねぎらって、動画を最後に貼ろう…)
「放送しちゃだめ!」とは思わなかった私ではありますが、サントリーさんのように新しいビールを積極的に生み出すアクティブさを持ち、かつ広く女性が活躍しているイメージの企業がこういう、下品で、ちょっと考えれば「炎上」するであろうコマーシャルをよく作ったなぁとある意味感心したり。
そうか、むしろ「炎上商法」か!!!
と、逆に考えたりもしましたが、すぐに別のCMに差し替えたということは深読みしすぎだったわけですね。
いずれにせよ、私の中のサントリーさんのイメージにちょっと変化がありました。
出張先で女性が自ら近ずいてくる、それがみな若くて美人で胸が大きい、というのは構わないと思います。だって夢なんでしょ、妄想なんでしょ、女性に白馬の王子さまが駆け付けるのとどう違うのかな?
ただ、セリフ、言い回し、表情、そういったものが明らかに意図したものであり、品がない。
もしかしたら喜ぶ男性がいるのかもしれないけれど、女性は嫌悪感を持つ方のほうが多いよね。ビールを飲む人が減っているのに、広く楽しまれる一般的なビールのターゲットを男性に絞り、かつ女性を敵に回して何を目指しているのかな、と。
何よりも残念だったのは、この「頂」のCMが世に出る前に見たであろうサントリーの中の人が、誰も「これはまずいでしょう」と思わなかったこと。もしかしたら思ったのかもしれないけれど、言えなかったこと。これは私の職業病的視点であり、世の中の多くの人が想像し企業イメージを損なうものではないかもしれませんが、ダイバーシティー経営を掲げる企業には、なかなか厳しい。
法律云々を除けば、ものの良し悪しや品が無いと思うかは主観に拠るところが大きいです。でも、広く公に流すものだからこそ、厳しい「主観」でチェックし、自社の理念に合致し、イメージを損なわないものであると断言して送り出すべきではないでしょうか。
まともな社会通念を持つ男性、女性で意見の言える立場の人がいないのだな、と思いました。また、広告代理店、制作会社のどこからも問題提起が無かったのか、あったけれど通ってしまったのか。だとしたら、「お客様は神様です」と巨大企業を奉る関連会社が脇を固めているのでしょうか。下の人間は上の人間にモノを申せない環境なのでしょうか。
それとも、制作会社がサントリーさんの企業イメージを考えず、「炎上してもこのぐらい大丈夫ですよ」と押し通して作ったのでしょうか。
いずれにせよとても残念なことで、これは自戒の念を込めてになりますが、その時の話題性だけでなくクライアント全体を考えてのマーケティング活動をしなくてはダメだなぁと。
因みに、差し替えられたCMはこちら。最初からこれだったら、確かにここまでの反応はなかったと思いますが、サントリーさんの企業イメージには合っているし、悪くなりようもなかったでしょう。
PRの「成功」ってなんだろう?と宮城県知事の言葉を聞いて思うこと
一方、宮城県のPRコマーシャルのほうはどうかと言うと、これも視聴者が何を連想するかを解った上での品のない表現になっています。
こちらも「即刻、放送禁止だ!」とは思わなかったものの、老若男女がターゲットであろう県の観光PR動画がこれなの?と不思議な気分に。
もちろん、バッシング・苦情はSNSのみならず県にも直接あるのは当然ですが、驚いたのはその反応に対しての村井嘉浩 宮城県知事のコメントでした。
当然、制作して賛否両論あるだろうなと。
可もなく不可もなくというようなものは関心を呼びませんので、リスクを負っても皆さんに見ていただくものを(制作しよう)と思いました。テレビ番組で「賛否両論、いろいろあると思います」と取り上げられたおかげもあって36万アクセスを今超えました。さらに厳しいことを言っていただくともっと(アクセスが)伸びると思いますので、どんどん厳しいことを言っていただいてアクセス数を増やしていただきたいと思っています。
要するに、動画のアクセスが伸びている、アクセス数を増やすことを「成功」とコメントされているのです。
何か、目的と手段をごっちゃにされている印象です。
嫌悪感を持たれ、炎上して話題にあがることを「成功」というのは、県のプロモーション、特に観光を誘致する立場としては、かなりお粗末ではないでしょうか?
プロモーションの「成功」とは動画再生や反応の数ではなく、その結果「好感度があがった」「旅行者が増えた」ではないでしょうか。
みんなに見ていただいて、要はこの宮城県が涼しいんだと、夏場来ていただきたいなと。涼(りょう)・宮城(ぐうじょう)だよ、涼しいよということをPRするためなので
正直申しますと、内容の下品さばかりが入ってきて、宮城県が涼しいとかまったく頭に残りませんでした。(というか、この記者会見記事を読んで「あ、それがいいたかったのね」と気づく)
旅行に来てお金を落としてもらうのが目的ならば、家族連れなどのグループが単価が高くなりますよね。家族旅行の行き先で、女性である「お母さん」の発言権はかなり大きいと思います。
本当にこのCMを見て、「行きたいなぁ」と思うのでしょうか?
もし、CMを企画制作した会社が知事にこのように説明し企画を通したのだとしたら、世の中のことを見ていない&想像力の無い現場であったろうと思います。
サントリーさんと違ってすぐに差し替えられないのは、「税金」だからではないかと思います。何を言われても「無駄なものを作った」と認めるわけにはいかないのではないでしょう。
政治家の失言もそうですが、慎重な「主観」でものごとを判断したいところです。